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第64回、米国軟包装協会「2020年パッケージング賞」発表!(後編) 

前編に続いて、2020年度の米国軟包装協会のパッケージング賞(2020 FPA Achievement Awards)の金賞を獲得したパッケージをご紹介する。

▼前編はこちら

第64回、米国軟包装協会「2020年パッケージング賞」発表!(前編) 

金賞:Amcor社「Insura」(医療機器包材のシール検証技術)

Photo:Amcor社のシール検証技術 「Insula」。完全密封できている状態ではシール部が青い。( https://www.flexpackmag.com/articles/90350-fpa-awards-30-packages-for-fantastic-flexible-packaging より)

FDAの医療機器・放射線保健センター(医療機器の製造、性能、安全性を監督する部署で、市販前の医療機器の検査・承認を行う)によれば、2017年の医療機器のリコール数は1,600万件を超えるが、このうち2/3はパッケージのシール不良によるものだという。

シール不良により医療機器の無菌性が担保できなくなるので、デバイスメーカーにとっては重大な欠陥となる。デバイスが包装された後に、パッケージのシールの完全性をチェックする方法として破壊検査があるが、信頼性は高いものの廃棄ロスが増える。一方、非破壊検査は時間がかかることと信頼性に劣るため、新たな技術開発が待ち望まれていた。

Amcor社が医療機器包装用に特別に開発した「Insura」は、無菌包装システムにおける完全密封性を検証する非破壊、リアルタイムの視覚検知技術だ。包装が適切なシール条件(温度、圧力、時間)で行われた時にのみ、パッケージのシール部が青くなる。

青色の状態が続いていれば、シールの密封性は保証されており、青の濃度とシール強度は相関するという。この検証技術は、シールバーの不具合、夾雑シール、シール時の熱量不足など、シール不良の原因特定にも役立つ。

金賞:PrintPack「Paquiトルティーヤチップ」のパウチ

Photo:PrintPack「Paquiトルティーヤチップ」のパウチ( https://www.flexpackmag.com/articles/90350-fpa-awards-30-packages-for-fantastic-flexible-packaging より)

PrintPack社は、小売の棚で消費者にインパクトを与えられるパウチをデザインした。大きなロゴ、鮮烈な印象のグラフィックス、チップスの高画質の写真。いずれも、多くの競争相手が居並ぶ棚で、消費者はこのブランドを一目で見つけ出すことができて、いつまでも記憶に残るデザインだ。

新パウチは、背景に黒を使用し、それぞれのフレーバーのアクセントカラーが引き立つよう工夫されている。例えば、ゴーストペッパーの場合は白、ナチョチーズはオレンジ、サルサヴェルデは緑という風に視覚的に関連づけ、チップスの鮮明な画像は背景の黒から浮かび上がる効果をもたらしている。

マット仕上げのフィルムに、メタリック調のアクセントカラーのパターンを配して柔らかな光沢を生み出し、洗練度を高めている。これは高精度の製版技術と、溶剤ベースのインキを使用したフレキソ印刷により可能になった。

金賞:ブラジルAmcor社「ジャー型スタンディングパウチ」

Photo:ブラジルAmcor社「ジャー型スタンディングパウチ」( https://www.flexpackmag.com/articles/90350-fpa-awards-30-packages-for-fantastic-flexible-packaging より)

このパッケージもシェルフ・インパクトが際立っており、金賞に輝いた。ブラジルの大手食品メーカーのPredilecta社は、Saccialiブランド用にプラスチックの使用削減と長期のシェルフライフを可能にする軟包装の利点を活かし、ユニークなジャー形状の異形スタンディングパウチにアップグレードした。

これはブラジルAmcor社の協力のもとに創り上げたものだ。これまでガラスジャーにパックされていたトマトソースを、消費者に馴染みのあるジャーの外観を維持しながら、省資源、軽量な軟包装に変更することで、生産時や流通工程の温暖化ガス排出削減を実現し、輸送中の振動や衝撃による商品の損傷を解決した。

金賞:Glenroy社「STANDCAP付き倒立パウチ」

Photo:Glenroy社のSTANDCAP付倒立パウチ。中央のハチミツ容器は透明化した。( https://www.flexpackmag.com/articles/90350-fpa-awards-30-packages-for-fantastic-flexible-packaging より)

ウィスコンシン州、ミルウォーキー郊外に本社をおく非上場のGlenroy社は、米国の老舗軟包装専業メーカーだ。

Aptar社の「STANDCAP」は、2015年にDaisy社のサワークリーム(当時はSonoco社が包材を供給)に採用されて一躍有名になった。GlenroyはこのSTANDCAPを活用して、Curation Foodsのユカタンワカモレ(メキシコ料理に使われるサルサの一種)、Uncle Dougie'sのBBQソース、Chicoのハチミツの容器に採用された。

リジッドなガラス瓶やプラスチック容器に比べ軽量になり、パッケージ材料の使用量を大幅に削減した。柔軟なスクイズ容器から必要量を正確に取り出せ、内容量をほぼ100%使い切ることができる。逆流防止弁付きキャップが、ハチミツなど粘体性の中身が注ぎ口から滴り出るのを防ぎ、片手でハンドリングできる扱い易さが消費者に支持されている。

金賞:ePac社「限定版デジタル可変印刷」スタンディングパウチ

Photo:ePac社のデジタル印刷による、限定版スタンディングパウチ( https://www.flexpackmag.com/articles/90350-fpa-awards-30-packages-for-fantastic-flexible-packaging より)

ツール・ド・フランスに参加するサイクリングチームEF Education First Pro Cyclingの公式パートナーで、スポーツ栄養ドリンクメーカーのSkratch Labsは、EFチームのチームカラーであるメタリック調のピンクとブルーが印象的なパウチを発表した。

同社は粉末のレモン&ライムの水分補給ドリンク用に、10,000個限定で、1個ずつがグラデーションのあるメタリックカラーで印刷されたスタンディングパウチを短納期で調達。そのために、デジタル印刷専業の軟包装メーカーePac社とタイアップして、これを創り上げた。

フィルム原反はHP Indigo 20000デジタル印刷機を使用。可変データツールを活用し、EFチームのジャージとフィットするメタリックカラーをパウチに再現した。

金賞:PrintPack社「女性起業家を支援するStacy’sのデジタル印刷パウチ」

Photo:PrintPack社がStacy’sの女性起業家支援のプロジェクトで製作したデジタル印刷のパウチ( https://www.flexpackmag.com/articles/90350-fpa-awards-30-packages-for-fantastic-flexible-packaging より)

この限定版パッケージも、デジタル印刷を効果的に活用している。女性起業家の成功を支援するプロジェクト「Women’s History Month」には、北米FritoLayのチップスブランドであるStacy’sがスポンサーの一社として参加している。

目的は、ブランドと女性起業家を結びつけて新たなビジネスの立ち上げを支援することだ。製品はUnited Wayを通じてオンラインで販売され、収益金は女性が起業したスタートアップ企業に資金提供される。斬新な色彩のパッケージをデジタル印刷で製作したのはPrintPack社だ。

金賞:PAXXUS社「StreamOne R」(レトルト可能なリサイクル対応の軟包装)

Photo:PAXXUS社のレトルト可能なリサイクル対応PET包材

ヘルスケア向け軟包装メーカーPAXXUS社は、レトルト殺菌が必要な用途にアルミ箔を使用しないPETモノマテリアルの軟包材を供給している。外層には寸法安定性とガスバリア性に優れる2軸延伸の透明蒸着PETフィルムを用い、内層にヒートシール性に優れる非晶性のPET樹脂を押出ラミネートしている。

この包材はレトルト殺菌後も0.01 cc / 100in 2 / day / atmの酸素バリア性と、0.02 g / 100in 2 / dayの水蒸気バリア性と有し、完全密封機能を維持している。PETのみで加工されているため、パウチの透明化も可能だ。

使用後の包材はPETを解重合し、モノマーに戻してバージン同様のPET樹脂に再生するリサイクルスキームに参加すれば、循環経済に貢献できる。

さいごに

軟包装には使い捨てパッケージのイメージが強く、特に海洋に廃棄されたプラスチックが生態系に深刻な影響をもたらすと指摘されて以来、プラスチック忌避の逆風をまともに受けるようになった。

こうした中で、昨年はリサイクルが可能なモノマテリアルパウチが登場し、大手消費財メーカーでも採用件数が増えている。そして今回の受賞作にもこうしたパウチが見受けられる。プラスチックには極めて有用な特性があり、優れた機能がある。

パッケージも使用した後は、ゴミとして棄てるのではなく、これを可能な限り有効活用することが求められている。使用済みプラスチックを様々な技術を駆使して純度の高いプラスチックに再生し、再活用する技術開発が進み、昨年から今年にかけて具体的な取り組みが次々と提案されている。これはまた別の機会にご紹介することとしたい。(森 泰正記)

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