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第64回、米国軟包装協会「2020年パッケージング賞」発表!(前編) 

はじめに

3月5日に今年で64回目となる米国軟包装協会のパッケージング賞(2020 FPA Achievement Awards)が発表された。米国で最も早く発表される2020年度のパッケージング賞だ。

米国の最新トレンドが分かるのはもちろん、プラスチックや金属、板紙などの硬質容器が主流を占めている米国のパッケージング市場で、軟包装の拡がりを知ることができるので、筆者はこの賞に注目している。

軟包装はシングルユース・パッケージの代表で、他の包装容器と異なりリサイクルやリユースすることが最も困難なパッケージ形態でもある。軟包装の弱点ともいえるこの問題に、米国ではどのような回答を準備し、どのように取り組んでいるか、その現状を把握することも意義がある。

この賞は、2019年に市場投入された消費財軟包装の、①印刷の魅力度、②小売店頭でのアピール力、③持続可能性、④革新的包装技術の4点を評価対象に審査されている。以下に今年の入賞作品をご紹介しながら、米国の軟包装パッケージングの動向を探ってみたい。

Highest Achievement賞:AeroFlexx社「エアーアシスト・スタンディングパウチ」

今年応募のあった73点のパッケージの中で最優秀賞にあたる「Highest Achievement賞」は、AeroFlexx社が受賞した。このパッケージは、以前「アメリカの洗剤革命!トップメーカーP&Gが提案する、これからのパッケージ」でご紹介しているので、併せて参照願いたい。

アメリカの洗剤革命!トップメーカーP&Gが提案する、これからのパッケージ

消費財メーカーであるP&Gが、ホームケアやパーソナルケアのパッケージングの概念を覆そうと自ら設計、開発したこの液体用パウチは、実際にP&Gの台所洗剤ブランド「DAWN」のパッケージとして2017年にAmazon.comで試験販売が実施され、消費者から高い評価を得た。

P&Gはこの技術を同社製品に留めるのではなく広く業界に普及させていこうと、インパクト投資ファンドのInnventure社と連携して軟包装専業メーカーAeroFlexx社を設立。同社が出願した40件以上の特許権に対して、独占的使用許諾を与えて事業化を支援している。

現在、自動充填包装の量産ラインをP&G系列の包装機メーカーと共に開発中で、年内にもこれを完成させ、量産化に踏み切ると報じられている。

AeroFlexxは、①軟包装市場の拡大に貢献、②印刷の魅力度、③小売棚でのインパクト、④持続可能性、⑤革新的包装技術、という5つのカテゴリーで金賞を獲得し、Highest Achievement賞に輝いた。

高速の自動製袋ラインは、パウチ側面の4カ所に窒素ガスを封入したフレームをつくりながら、スコアリング、ガゼット、平底、セルフシーリングバルブを形成し、液体を自動充填していくという高度なも。軟包装技術の進化と市場拡大を実現するとして、高い評価を受けた。

Photo:再度、最優秀賞のAeroFlexx社のパウチ。左はペット用シャンプー、右はボディウォッシュ。( https://www.flexpackmag.com/articles/90350-fpa-awards-30-packages-for-fantastic-flexible-packaging より)

AeroFlexx社のパウチは、キャップがなくても漏れる心配がないセルフシール機構。4本のエアーフレームで支えて中身が減っても自立する設計だ。

濡れて滑りやすい浴室内でも、片手で容器を操作できるハンドリング性の良さ。容器にクッション性があるので、eコマース配送の際にも商品破損防止用の緩衝材が不要。ボトルに比べプラスチック使用量を50%以上削減できるなど、パッケージとしての機能が満載である。

同社は「近未来の液体容器」と称し、まず硬質容器が強いホームケア、パーソナルケア分野で採用を目指し、将来は食品・飲料分野にも進出を狙っている。

金賞:Uflex社「4D Pack」

Photo:インド最大のフィルムメーカーUflex社のパッケージ( https://www.flexpackmag.com/articles/90350-fpa-awards-30-packages-for-fantastic-flexible-packaging より)

まるでカートンのような形状のレンガ型の軟包装を提案しているのは、インド最大のフィルムメーカーUflex社だ。6面に美しい印刷を施されたパッケージは、商品をストアの棚に陳列すれば消費者の目を惹きつける。

6面それぞれに異なるフィルム素材を使用することも可能だ。同社得意の多層フィルム、アルミ蒸着・透明蒸着フィルムを使うことにより、ガスバリアや水蒸気バリアに優れた包材設計もできる。

上面にも側面にも持ち運びに便利なハンドルをつけ、中身を取り出しやすいリクローザブルなジッパーがついている。一般的なスタンディングパウチに比べ、自立性は非常に安定している。

金賞:Uflex社「FlexiTube」(米Bio Creative Labs社向け)

この植物性ヘアケア製品のチューブもUFlex社の製品だ。同社は今回4点のパッケージをエントリーして、金賞3個、銀賞3個を獲得した。

チューブの周囲360度に、切れ目のないソフトなマット仕上げ印刷とリバースグラビア印刷を施すことにより、高品位のグラフィック画像を再現している。 金色に輝くメタリックラインは、ホログラフィックレイヤーを使用しており、箔押し加工が不要になった。

金賞:Plastic Packaging Technologies社(ペットフードのHill’s社向け)

Photo:Plastic Packaging Technologies社の“Recyclable”なモノマテリアル包装( https://www.flexpackmag.com/articles/90350-fpa-awards-30-packages-for-fantastic-flexible-packaging より)

Plastic Packaging Technologies社は、革新的なPEフィルム、包装機、加工技術を組み合わせて、世界を代表するペットフードブランドScience Diet向けに、PEモノマテリアルで底ガゼット付のスタンディングパウチ(230g入り)をつくり上げた。

それぞれの特長を持つPEフィルムを組み合わせて、従来のペットフード包装と同等の透明性、印刷適性、美粧性、袋の剛性、耐ピンホール強度、ガスバリア特性、保湿性、耐油性を実現し、包装機械適性にも優れる。

加えて袋の再密封が簡単なジッパー付き、レーザースコアリングによる易開封性を付与するなど、消費者の使い易さにも工夫を凝らし、ペットフード容器として求められる機能と外観を全て備えたリサイクル可能なペットフード包装だ。

PEモノマテリアルといっても、ガスバリア性はPE単独では実現できないので、PE層の一部にEVOH層を挿入している。本来PEとEVOHは相溶性がないので、リサイクル工程で混合されるとゲルやピンホールが発生し、また物性低下により、再生PE樹脂の一部の用途では使用不可となる。

リサイクル可能を謳う以上は、PEとEVOHを完全相溶させて再生用途(ゴミ袋、緩衝材や建材用途など)でも支障なく使われる設計が必要となる。Plastic Packaging Technologiesはこの問題を克服し、リサイクル可能の認証マークを得た。

おわりに

2020年の米国軟包装協会のパッケージングコンテストで金賞を受賞したのは全部で11点ある。残りの7点については後編でご紹介し、米国の軟包装業界で起きている変化を読者の皆様と探っていきたい。(森 泰正記)

▼後編はこちら

第64回、米国軟包装協会「2020年パッケージング賞」発表!(後編) 

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